今年の春が始まる前の季節、山梨県のアルテオーガニックガーデンには、化粧品の原料としていろいろな薔薇を植えました。
5月の終わり、待ちかねていた薔薇がようやく咲き始めました。
でもまだ薔薇たちは、野生の植物たちの間で、異邦人のように少しびくびくしながら咲いているように見えました。
当然ながら、もともとここに棲んでいる植物や虫たちにしばしば邪魔者扱いをされることも。
ある日、白い可愛い野ばらが、壇上になった石垣を覆うように咲き始め、気がつくとそれは見事な花の壁になりました。
本当にのびのびと、青い空とも、そして向かい側の富士山とも、しっくりと調和して咲き誇っていたのです。
何かがそっと教えてくれたような気がしました。
ここには、わざわざ外から気取った花を持ち込まなくても、もともと最高に美しく見えるものがあるのだと。
ここに白薔薇を配したのは、自然のガーデナー。とてもかなわない。
夕暮れ時、可憐な白薔薇たちが刻々と、青く沈んで、ひとつに溶けあっていくーー
ただただそんな光景に見とれていました。