今年のお正月は、山梨県にある長寿村「棡原」で過ごしました。
宿での朝夕の食事は、ほぼ自家栽培の野菜料理。大根、イモ類、白菜、ニンジン、小松菜などなどなど、甘みと深みのある味わいの野菜に飽きることはありませんでした。
棡原は、近藤正二博士の研究で有名になった長寿村。明治や大正時代、日本人の平均寿命は50歳~60歳でしたが、棡原では100歳を超える人も珍しくないことが報告されてにわかに脚光を浴びるようになりました。
それも単に長生きではなく、高齢になっても畑仕事ができるほど健康を保っていました。
近藤博士は、棡原が長寿村である理由として、まず食べ物にあることを伝えています。
意外なことに、山間であるためにお米ができない環境が良かったのです。
お米の代わりに、主食は、麦、アワ、タカキビなどの雑穀、イモ類を混ぜたものになります。そのため自然にミネラル豊富な主食になったのです。
正月中の棡原でのご飯にも、アワやタカキビなどが混じっていました。三時のオヤツとして出てきたお餅にもタカキビの粒粒が入っていました。
棡原では調味料も自家製。2年か3年にまとめて味噌を手作り。宿の傍にある蔵には大きな味噌樽が並んでいました。
自家栽培のオーガニック野菜と自家製の調味料¥となれば究極のオーガニック食!
なるほど長寿になるわけだ!
博士は棡原についてもう一つ、現代人にとって意外な発見をしています。
なんともうひとつの長寿の理由は「重労働」にあるというのです。
山間にある棡原では、山を切り開いた傾斜30度の畑が当たり前。イモを掘り出せば、下に転がっていってしまうほどの急傾斜。おのずと畑仕事は、通常よりも重労働になるわけですが、そのおかげで高齢者になっても骨が太く、背中がしゃっきと伸びて若々しい体を維持しているのです。
棡原での正月中は、毎日、山沿いの道を散歩したり、きれいな川の流れを楽しんだりしました。お金を使う店や遊技場もなく何もないところ。ただ自然の光ときれいな空気があるだけ。退屈するどころか、体も心もきれいになって軽やかに。
現代人があくせく走る反対方向に、幸せ時間があるのかも……